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2012/08/17

ジェントリフィケーションがすすむ北加賀屋


北加賀屋では「ジェントリフィケーション」が進行している。
「ジェントリフィケーションとは、もともと衰退した街に、①新しい産業部門に従事する人、新しい職種に関わるなど、新しいワークスタイル、ライフスタイルをもつ、②年齢的には若い人たち、が魅力を感じて居住・就業を始めることによって、地域が活性化することをいう」のだけど、近年の北加賀屋の動きはまさにこの「ジェントリフィケーション」という言葉で説明できる気がしてならない。

北加賀屋とは大阪市住之江区にある地域で、かつては造船所や家具工場が立ち並び、日本の高度成長を支えた工業都市として賑わいがあったよう。
でも、90年前後には産業構造の転換や景気の悪化などの理由から、企業の倒産・撤退が相次ぎ、空き家や空き店舗、空地が目立つようになり始め、地域は少しずつ元気をなくしていったという。

2004年。
アートプロデューサーの小原啓渡さんが名村造船所跡地を「可能性が詰まった宝島」と感じたことが北加賀屋の転機となった。
名村造船所跡地には4万㎡にも及ぶ広大な敷地に立巨大なドッグや倉庫が立ち並ぶ。
小原さんは「ここをアート実験場にしたい」と土地保有会社である千島土地さんに提案し、了承・協力を得る。
そうしてできたのが、現在の「クリエイティブセンター大阪(CCO)」というわけである。
旧工場は音響・照明などの機材がそろう本格的な音楽スタジオ「STUDIO PARTITA」に。
旧事務所棟内は創造スペース「BLACK CHAMBER」に。
他にも工房や簡易宿泊所、水上ステージなどがリノベーションを通じて生み出されている。

ライブやイベントなどをはじめとした芸術文化の発信地として活用されているCCO
2010年からは「DESIGNEAST」の会場としても使われている。
これは「世界の”EAST(東)に位置する大阪。この街を"国際水準のデザイン/思考の発信場"とすることで、『大阪』という都市の新たな可能性を見いだす試み」として開催されているイベント。
2009年はプレイベントとして「DESIGNEAST00」が中之島BANKSで開催されたのだが、2010年からは場所をCCOに移し実施されている。
毎年テーマが設けられており、2010年は「ソーシャル・サスティナビリティ」、2011年は「周辺と中心」、2012年の開催(2012915日〜17日)も決まっており、今年は「状況と対話」をテーマに実施される。
恒例となったこのイベントであるが、毎年多くの創造産業に従事するゲストや参加者で大きな盛り上がりをみせている。

また、2008年にはCCOが北加賀屋の旧ビジネス旅館をリノベーションし、アーティスト・イン・レジデンス施設「AIR大阪」を開設し、これを皮切りに、2009年からは北加賀屋エリアを「創造性あふれる魅力的なまちに変えていく試み」として「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想」を提唱。
北加賀屋エリアに「クリエイティブ・クラス」が集うような取り組みを進め、国内外に情報を発信していくことで、「北加賀屋エリアの文化や魅力が向上するよう」、まちづくりを進めていこうというものだ。
こうした動きもあってか、2009年には“もうひとつの社会を実践するための恊働スタジオ”として「コーポ北加賀屋」がオープン。
かつて家具工場だった場所をリノベーションし、アート、オルタナティブ・メディア、アーカイブ、建築、地域研究、サークル、NPOなど、様々な業種・業態の創造産業に従事する人たちが入居し、活用している。
2010年にはNPO法人「Co.to.hana」さんが北加賀屋駅にほど近い場所で活動を開始し、デザインの力によって社会的課題や地域が抱える課題の解決を目指して、団体や企業、行政とともに業務を行っているという。

最近の動きとしては「北加賀屋クリエイティブファーム」というプロジェクトがある。
このプロジェクトは単に土地を個人で分割して活用するといった「共同農園」というわけではなく、複数の参加者がチームを組んで、チーム単位で農園を活用していく「恊働農園」ともいうべき手法で運営されている。
チームでミーティングを開きながら、管理・運営方法などを検討しながら進めていくので、野菜作りを楽しめるだけでなく、世代や所属を超えたコミュニティの形成が期待でき、更にはプロによる指導も受けられるという。
現在の農園は1カ所だけど、運営側には、今後、農園の数を増やしていこうとの考えがあるようだ。

これまでざっと北加賀屋の動向について概観してきたけど、今、北加賀屋は「クリエイティブ・クラス」を集めていると言ってもいいんじゃないだろうか。
「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想」もあり、「北加賀屋クリエイティブファーム」も動き出しているし、「DESIGNEAST」の注目度も年々上がっている気がするし。
これから北加賀屋の「ジェントリフィケーション」はますます加速するかもしれない。
北加賀屋に「クリエイティブ・クラス」が流入していくことで、北加賀屋のまちがどう変わるのか。
いくらハードを整備しても、政策を作っても、結局まちを変えるのは人だったりするからね。
「ジェントリフィケーション」を「クリエイティブ・クラスによる都市再生のプロセス」と分析する学者もいるし、これからの北加賀屋の動向が気になるところ。