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2012/11/12

渋谷はるのおがわプレーパーク


代々木公園西門の向かいに「はるのおがわコミュニティパーク」というのがあるらしい。
その園内にある「渋谷はるのおがわプレーパーク」は、渋谷区内で利用率12位を争う人気の公園なのだそうだ。

人気の秘密は公園内にある小さな看板にあらわれている。
そこに書かれている文章がコレ。

ここは「自分の責任で自由に遊ぶ」公園です。
子どもたちが「やってみたい!」を最大限
カタチにするチャンスのある遊び場です。
子どもたちが自由に遊ぶためには
「事故は自分の責任」という考え方が基本です。
地域のおとなたちと渋谷区が協力してこのプレーパークをつくっています。
こわれているところをみつけたり困ったことがあったら
プレーリーダーやスタッフに伝えてください。
渋谷区はるのおがわプレーパーク

そう、「渋谷はるのおがわプレーパーク」は「自己責任」で「やってみたい!」が叶えられる公園なのだ。
それこそが人気の秘密。
木登り、穴掘り、焚き火に焼き芋、農作業
多くの公園で禁止されているようなことでも、「自己責任」でなんでもできちゃう。
遊び方、使い方が委ねられているので、子どもたちは自分のクリエイティビティを存分に発揮することができる。
遊具も既存のものを使わず、子どもたちの発想やニーズに応じて、その都度、プレーリーダーやボランティアスタッフと一緒にDIY
これまでアスレチックジムやツリーハウス、ウォータースライダーといったものまで作っちゃってるというから、そのクリエイティビティには驚くばかり。
流しそうめんやパン作りなど、親子で楽しめるイベントも開催されるので、リピート率も高いのだとか。

「渋谷はるのおがわプレーパーク」のように、遊びを「禁止」するのではなく、遊びを「つくる」形式の公園を「プレーパーク」というのだそう。
特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会が全国のプレーパークに関する情報を収集・発信し、また設置推進に向けた活動を行っているので、興味のある方は是非サイトをチェックしてみてください。

「渋谷はるのおがわプレーパーク」は地域住民が作った「渋谷の遊び場を考える会」が渋谷区から委託を受け運営している。
開園時間は午前10時から午後5時まで(木曜日は休園)。
開園時間にはプレーリーダーやボランティアスタッフが常駐し、子どもたちに遊びをサポートする。
それ以外の時間帯は入園禁止。

「渋谷はるのおがわプレーパーク」の仕掛け人である渋谷区議のハセベケンさんはこう語る。

「行政は、窓口に来る少数の苦情に、全て対応するのが基本になってるでしょ。しかし、それでは、公園の禁止事項はどんどん増え、何も遊べなくなってしまう。実際は、子どもがケガをしても区のせいにしないと思っている人は多いんです。そういった、窓口に来ないサイレントピ—プルに対するマーケティングができていないから行政は偏ったものになっていく。やっていることがカッコイイことじゃないから。そこで、そういう人たちが、グッとくる公園を作ろうと思ったわけ」

公園内の芝生に入ることすら許されず、木登りやボール遊びもできない。
火遊びなんてもってのほか。
最近そんな公園は少なくない。
こうした状況が増えているのは、公園の管理側が生活者のクレームに対応してきたからなのかもしれない。
その結果、一部の人にとっては「安心・安全」な公園にはなったかもしれないが、マジョリティであるサイレントピ—プルにとっては「安心・安全」でも、どこか「もの足りない」公園になってしまったのだろう。
その「もの足りない」ニーズに応えたのが「渋谷はるのおがわプレーパーク」というわけだ。
その利用率の高さが、マジョリティのニーズに合致した公園である証拠。

「渋谷はるのおがわプレーパーク」ができてもう8年になるそうだ。
こうした常設のプレーパークのニーズは渋谷区に限らないはず。
それにも関わらずプレーパークの数は多いとは言えず、常設のプレーパークはわずかしかないのが現状。
しかし最近では、設置に向けて動き出している地域も増えてきているようなので、これからの広がりに期待したい。

■特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会:http://www.ipa-japan.org/asobiba/

アオーレ長岡


新潟県長岡市は市役所に問題があった。
役所の人間が云々という問題は長岡市に限らず、日本全国の自治体が抱えている問題だけど、長岡市の場合はそうしたヒューマンリソースのみならず、市役所というハード自体に問題があったのだ。
それがこれ。

(1)長岡市役所の本庁組織が地方分権や合併などに伴う業務の拡大のために、市内7カ所に分散し、不便な状況になっている。
(2)災害時の防災拠点となる本庁舎の耐震性が、国が定める基準の6割程度しかない。

こうした状況から、長岡市では「市役所どうする?」問題があったのだそう。
そのため、長岡市は「行政機能再配置検討市民委員会」「意見交換会」「市政懇談会」などを設けて、市民の意見の聴取に積極的に取り組むなどして、さまざまな観点から検討を重ねてきたそうだ。
長岡市が抱える課題の解決のためには、市役所の中心市街地への移転が最も効果的なソリューションである。
検討の末、そのような結論に至り、20072月の市議会にて本庁舎の中心市街地への移転が正式に決定。

そうして201241日にオープンしたのが、シティホールプラザ「アオーレ長岡」。
設計したのは日本を代表する建築家の隈研吾さんなんだって。
「常に何か楽しいイベントをやっていて、用事がなくてもぶらりと立ち寄ってしまう。そんなまちのにぎわいの発信地でありたい」
そんな想いから生まれたのが、「生活の温もりと人びとのにぎわいにあふれた『まちの“中土間(ナカドマ)”』」というコンセプト。
オープン以来、そのコンセプト通り、「あらゆる世代の多様で自発的な活動を実現する場として、また、市民活動の『ハレの場』として、誰もが憩い集う『市民交流の拠点』」として活用されているのだとか。

「アオーレ長岡」はJR長岡駅と直結しており、駐車スペースも申し分ない。
地下駐車場に103台分、市営駐車場と提携駐車場を合わせるとキャパシティは1500台分。
環境にも配慮して自然エネルギーを積極的に活用できる造り。
耐震性は基準の1.25倍の強度を誇る。
当初の予定通り「アオーレ長岡」はJR長岡駅前という中心市街地に建設されたわけだが、市役所を中心市街地に移転する場合、通常は出ない国の補助金を受けることができるとのこと。
また、住民参加型市場公募地方債「アオーレ長岡市民債」を発行することで、建設費の15億円分の資金を調達したそうだ。

「アオーレ長岡」の特徴は、なんといっても「アリーナ」「ナカドマ」「市役所」が一体となっているところ。
市役所機能と「アリーナ」や「ナカドマ」(全天候型の広場)といった施設が一体となったのは、全国初のことなのだそうだ。
バスケットボールコート3面分の広さを持ち、座席数最大4200席の「アリーナ」では、プロスポーツのゲームやコンサート、講演会など多目的に活用でき、さらにナカドマと接する壁面を開放することもできるという。
日本建築の土間の概念を取り入れて作られた「ナカドマ」は、誰でも立ち寄ることができ、屋根があるので、天候問わず、さまざまなイベントに使うことができる。
市民団体の発表の場としてはもちろん、結婚式やミニライブ、300インチの大型モニターが設置されているので、パブリックビューイングも可能。
コンビニやカフェも併設され、また移動販売車や屋台も自由に出店することもできるので、全国から地酒や地ビール、B級グルメなどを集めてきて大規模なイベントの開催にも最適と言える。
市役所にも市民の疑問解消に最大限サポートする「市役所コンシェルジュ」新たに配置し、「たらい回しのない」「日本一便利で分かりやすい!」役所を目指しているそうだ。
なんとも頼もしいかぎりである。

「アオーレ長岡」はオープンに先立ち、2011年にプロモーション映像を作っている。
アートディレクションを担当したのは、ミスチルやゆずのアートワークでおなじみの森本千絵さん。
森本千絵さんと約100人の市民がワークショップ形式で一緒になって企画・出演している。
その映像がコチラ↓

振り付けはおそらくコンドルズの近藤良平さん。
映ってるしね、多分そうだと思う。
ちなみに隈研吾さんも、森本千絵さんも映ってるから気になる人は探してみてください。
補足で言えば、NHK連続テレビ小説「てっぱん」のオープニングで話題となった「てっぱんダンス」も森本さんと近藤さんが手がけたもの。
このプロモーション映像はナカドマの300インチディスプレイでも随時上映しているそうだ。
このプロモーション映像の作成にかかわった市民にとっては、なんかこれだけでこの場所に誇りと愛着みたいなのが湧く気がする。

「アオーレ長岡」はソリューション。
市役所機能の分散と防災拠点としての耐震強度の問題という「いま」の課題だけではなく、「これから」の課題に対する解決策として誕生したはず。
「アオーレ長岡」が「市役所」「アリーナ」「ナカドマ」の3つの機能を持って生まれたのは、「これから」の課題にも対応できるフレキシビリティを考えられてのことだと思う。
少子化、高齢化、人口減少問題に中心市街地の衰退
長岡市に限らず、日本全国の地方都市が「これから」取り組まなくてはならない課題は山のようにある。
長岡市は「これから」のまちづくりをこのように考えている。
「新しい長岡のまちづくりには、市民と市役所がともに考え、ともに取り組むことが必要。これこそが「市民との協働」です」
その拠点として、そのシンボルとして誕生したのが「アオーレ長岡」というわけだ。
全国初の機能を備えた新しいハードのポテンシャルを長岡市(民)がどう引き出すか。
ハードとソフトのベストミックスに期待したい。

■アオーレ長岡:http://www.city.nagaoka.niigata.jp/ao-re/

2012/11/05

ルーフトップシネマ


東京の目黒通りにあるCLASKA
ここは1969年創設のホテル「ニュー目黒」をリノベーションして2003年に誕生した文化複合施設だ。
「さまざまなカルチャーを撹拌することによって、おもいがけない化学変化をおこす装置」をコンセプトに、ダイニング&カフェ、ギャラリー&ショップ、貸しスタジオ、ホテルを運営している。
日常に潜む“わざとかたち”を発掘し、時代のものさしにあわせたオリジナルのメッセージを世界に発信するCLASAKA
そのモチベーションは、運営を通じて「日本人の中にある美意識のDNAは何なのか?」を問いかけることにある。
屋上に設えたテラスの使い方にもCLASAKAのその姿勢があらわれている。

8Fの「Rooftop Terrace」はその名の通り、屋上テラス。
周りに視界を遮るような高い建物がないので、東京を一望することができる。
普段は館内の利用者が自由にくつろげるスペースとして開放しているらしいのだが、ウェディングパーティをはじめとした各種イベントの際にも利用されるとか。
CLASAKAが有坂塁さんと渡辺順也さんによる移動映画館ユニット「Kino Iglu」と共同企画運営で行っている「ルーフトップシネマ」もそのひとつ。

「ルーフトップシネマ」は屋上の壁にプロジェクターで映画を上映し、オープンエアーのもと、ゆったり鑑賞しましょうという企画。
今年で4年目のこの企画は、CLASKAの夏の恒例イベントとしてすっかり定着しているようだ。

開場すると、参加者たちは席やウッドデッキに座ってお酒を飲んだり、夜景を見ながらお喋りしたり、上映までの時間を思い思いに過ごすのだそう。
そうして自然の暗転を待つのだ。
日が暮れれば、上映開始。
屋外ということもあってか、その開放感から場の雰囲気は終始和やかなのだとか。
スタッフもお客さんに混じってお酒を飲みながら一緒に映画鑑賞するっていうことからもその場の雰囲気がうかがえる。
上映中も、トイレに行ったり、追加のドリンクを買いに行ったり。
映画を観ながら皆で笑ったり、声に出して突っ込みをいれる人がいたり。
パブリックでもなく、プライベートでもない。
開きながら閉じている、そんなコモンな空間だからこそ、ユルく柔らかい雰囲気が醸成させるのかもしれない。

屋外ならではのハプニングすら楽しめてしまうのも「ルーフトップシネマ」の魅力。
屋内と違い、屋外では空間をコントロールすることができない。
天気もそうだし、音もそう。
天気が微妙だと空を見上げて会話が生まれたり、救急車が近づいてくると皆で「来ましたね(笑)」と顔を見合わせたり。
映画館にはないイレギュラーな出来事を共有することで、それが喜びに変わり、記憶の深い部分の刻まれることになる。
「非日常」な体験は思い出になるのだ。

日本人は器用と言われる。
それは日常の中で創意工夫をすることによって豊かさを手にいれてきたから。
日本人は、レヴィ・ストロースの言葉を借りれば、「ブリコラージュ」が得意な民族性なのかもしれない。
屋上。白い布。PC。プロジェクター。映画。
持ち合わせのアイテムに少しのアイデアを織り込むこと。
「日本人の美意識のDNA」の解明のヒントはそんなところにもあるような気がするのは僕だけだろうか。