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2013/03/22

BB cooking


外来種であるブラックバスが琵琶湖の生態系を脅かしている。
このことは昔からずっと言われてきているし、耳にしたことのある人も多いと思う。
問題視されてから長い年月が経ち、問題の認知度も高い。
もちろん、様々な対策も講じられてきた。
それにも関わらず、この問題は未だに解決していない。
むしろ深刻化してきている。
というのも、対策には当然お金がかかるが、その費用の捻出が厳しくなってきている現実があるからだ。
昨今の景気の悪化や国の制度改正のために税収が大きく減退し、厳しい財政状況が続いている滋賀県。
これまで滋賀県では琵琶湖に生息するブラックバスをはじめとした外来種を駆除するために年間数千万〜数億円規模の予算を計上して対策に取り組んできているが、今後、外来魚駆除のために現在の予算規模を拡大させることはおろか、維持していくことすら難しい。
  害獣である外来魚は「産業廃棄物」として処分されている

そんな状況化で、琵琶湖が抱える社会問題にアプローチする草の根的な活動が起こり始めているのもまた事実。
今回はそのひとつ、「BB cooking」という取り組みを紹介したい。
名前から察しがつくと思うが、この取り組みは簡単に言えば、ブラックバスを食べちゃおうというプロジェクト。
調理方法を開発し、それをレシピ化して紹介したり、釣り人たちが琵琶湖で釣り上げたバスを分けてもらって、その場で調理して振る舞うことを通じて、人びとの意識を、そして行動を変えていこうとする取り組みだ。
このプロジェクトは京都造形芸術大学の空間演出デザインコースの学生、井口香穂さんが始めたもの。
井口さんは卒業制作として「BB cooking」を提出し、コース内で最優秀賞を受賞するなど、この取り組みは高い評価を受けている。
ソーシャル&エコ・マガジン『ソトコト』(木楽舎)の取材も受けるなど、メディアからの注目の高い。



ブラックバスと聞けば、途端に「臭い!」「食べれない!」とネガティブなイメージを想起する人も多いと思う。
確かに、生息する場所や水質によってはそのイメージも間違いじゃない。
でも琵琶湖であれば、北部で採れるブラックバスはそのイメージを覆すのに十分な食材としてのポテンシャルを秘めている。

ブラックバスは生物学的に言えば、スズキ目に属する魚。
食用として親しまれているスズキの仲間なのだから、もっと食べられていてもいいはずなのだけど、「ブラックバスは食べられない」という固定観念、あるいはブラックバスに対するマイナスイメージのために、敬遠されてきている。
でも実際に食べてみると、ブラックバスの食材としての可能性を実感することができるはず。

ブラックバスの臭いが強いのは、皮の部分。
皮はぎさえ適切に行えば(実はこのプロセスが難しくて、なかなかハードルが高いのだけど)、臭みを気にすることなく食べることが出来る。
淡白な白身はどんな料理にも合うし、日本酒やワインといったお酒との愛称も良い。
ムニエルやフリット、薫製にちゃんちゃん焼き。
塩焼きやお刺身でも。

「ビワスズキ」の調理例(※試食会でいただきました)

「ブラックバス」というワードから条件反射的に否定的なイメージを抱いてしまう、そんな人にこそ一度、ブラックバスを食してもらいたい。
ビフォーアフターで、きっとその印象は大きく変わっていると思う。

ブラックバスというネーミングはどうもイメージが悪いので、その刷新から始めようという動きもある。
ブラックバスには和名がまだない。
そこで料理研究家の堀田裕介さんがブラックバスの和名を考案。
それが

「ビワスズキ」

琵琶湖に生息するスズキのお友達ということだそうだ。

今後、フォトグラファーのMOTOKOさんを中心に、井口香穂さん(BB cooking)や料理研究家や漁師、まちづくりコーディネーターら問題意識を共有するメンバーで「ビワスズキ プロジェクト(仮)」として、ビワスズキを食べる機会を設けたり、害獣問題についての考える機会や情報を発信していく活動を展開し、ビワスズキをブランディングしていくのだそう。

ブラックバスは「駆除する」べきものだというのがマジョリティの認識。
そして冒頭にも述べたように、駆除するためには莫大な費用がかかり、財政状況が逼迫している行政はそのための予算を毎年計上し続けるのが今後ますます困難になってくる。

もし人びとの中にブラックバスを「食べる」という選択肢が加われば、お金をかけて駆除していた魚が、お金を生む魚に変わるかもしれない。
ビワスズキの切り身がスーパーに並ぶ。
そんな日が来たら、琵琶湖の保全も、滋賀県の財政状況もいくらか改善されているはず

BB cooking」や「ビワスズキ プロジェクト(仮)」はまだまだ始まったばかり。
ブラックバス改めビワスズキを食べられる魚と認識している人はマイノリティではあるけれど、継続的に活動を続けていくことで少しずつそのパーセンテージを上げていくことができると思う。
一人ひとりが変われば、社会は変わる。
草の根的ムーブメントから社会的課題の解決ができるわけです。
一歩一歩、こつこつ、着実に。
「産業廃棄物」が「価値」を持つその日まで。

  BB cooking
  ソトコト