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2013/12/06

オープンガヴァメント(3)

アメリカではアプリケーションによって地域住民の資本をまちづくりに活用している。
オープンガヴァメント(2)ではそんなことを書いたけど、こんなクリエイティブなことは行政だけではできるわけがない。
そのバックにはクリエイティブな団体やスタートアップの存在がある。
今回スポットを当てるのは、そんな「ガバメント2.0」をバックアップする団体の代表格。
Code for America」という非営利団体だ。

設立者はジェニファー・パルカという女性。
彼女はメディア企業で働いた後、2009年に団体を設立させた。
2012年にはTEDにも登壇し、「Cording a better government(コーディングでより良い政府を作る)」という非常に興味深いプレゼンテーションを披露している。
TEDのウェブサイトにある彼女のプレゼンムービーは180万回を越える再生回数を記録しており、ここから彼女がいかに世界中から注目されていることが分かると思う。
一見の価値のあるプレゼンテーションなので、まだ見ていないという人は是非ご覧いただきたい。
また、彼女が20134月からホワイトハウスでCTOChief Technology Officer)補佐官としての登用されていることも補足しておく。


プレゼンにもあったが、ジェニファーは2011年から世界中から注目されるプログラムをスタートしている。
それが、行政サービスを改善するために、優秀なIT技術者(プログラマーのみならず、デザイナーも含む)を1年間休職させて、「途上国ではなく、市役所という未開の地へ」派遣し、都市が抱える課題を解決するためのアプリ開発をしてもらうという11ヵ月間のプログラム。
このプログラムは有給で、「フェロー」と呼ばれるアプリ開発を行う技術者には「Code for America」から$35,000が支払われるのだが、エリートプログラマー/デザイナーである彼らに取っては決して高額とは言えない金額だ。
それでも「フェロー」への応募は毎年殺到する。
昨年の応募総数は600人を超えたそうだ。
その中から2530人の選りすぐりの優秀な人材だけが役所に派遣されることを許される。

1年間のフェローの仕事は大きく3つで、オリエンテーション、ヒアリング、アプリケーション開発がそれ。
まずはじめの1ヵ月間はサンフランシスコにある「Code for America」のオフィスで研修。
プログラムに必要な知識やスキルを獲得・補強する意味で各分野の専門家によるオリエンテーションやレクチャーを受け、「未開の地」へ踏み込む準備を整える。
その後、チームに分かれ、担当する都市へ1ヵ月間赴任・滞在。
その間、業務をこなしながら役所の担当者へヒアリングを行い、課題や問題点を抽出し、どんなアプリが必要なのかを検討する。
それが終われば、サンフランシスコにあるヘッドクォーターに戻り、各都市の役所と連絡をとりながら9ヵ月間でいくつものアプリ開発に取り組む。
プログラムの流れはだいたいこんな感じ。

Code for America」のHPを見ると分かるけど、常駐スタッフはそれほど多くない。
小さな団体ではあるけれど、やってることはめちゃくちゃ大きい。
だって行政のあり方にイノベーションを起こしているんだから。
団体の運営資金は企業や財団からの寄付がもとになっており、その支援企業にはGoogleYahoo!Microsoftなどのが名前を連ねている。
加えて、受け入れ側の都市も団体に支払う。
その金額は3人の技術者を受け入れるのにおよそ$180,000
それでも参加したいという都市は多い。
事実、「Code for America」がこのプログラムを開始した2011年にはシアトル、ボストン、フィラデルフィアの3都市であったのが、2012年には8都市に増加。
派遣したスタッフの数も20人から26人と増加している。
高い料金を支払ってまで参加するメリットを行政が感じているということだろう。

普通、行政が一つのシステムを開発するのには数年の時間を要すとされているそうだ。
その分、費用も当然かさむ。
そうして時間もお金もかけて作ったシステムだけれど、機能しなかったり、課題の解決に結びつかなかったりということも少なくない。
でも「Code for America」から派遣される技術者はとにかく優秀(現役のGoogleのスペシャリストとか)で、仕事も早い。
2011年には21種類ものアプリが、そして2012年にはその数を大きく上回る52種類ものアプリが開発された。
これは従来の方法論では考えられないような驚異のスピードだと言えるし、市民のポテンシャルを引き出すアプリも多く、コストパフォーマンスは高いと判断されているんだろう。

また「Code for America」によって公開されたアプリケーションのプログラムはすべて公開されており、誰でも自由に改良・再配布が行える。
だから、アプリケーションを採用したい都市があれば自由にプログラムを手に入れて、それぞれの都市にフィットするようにアレンジして公開することができる。
オープンソースの考え方を採用していることで、今後、「Code for America」のプログラムを受け入れている都市以外でもアプリケーションの採用都市は増えていくだろうし、「ガバメント2.0」の動きはこれからどんどん加速していくはず。


Code for America
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