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2012/11/05

ルーフトップシネマ


東京の目黒通りにあるCLASKA
ここは1969年創設のホテル「ニュー目黒」をリノベーションして2003年に誕生した文化複合施設だ。
「さまざまなカルチャーを撹拌することによって、おもいがけない化学変化をおこす装置」をコンセプトに、ダイニング&カフェ、ギャラリー&ショップ、貸しスタジオ、ホテルを運営している。
日常に潜む“わざとかたち”を発掘し、時代のものさしにあわせたオリジナルのメッセージを世界に発信するCLASAKA
そのモチベーションは、運営を通じて「日本人の中にある美意識のDNAは何なのか?」を問いかけることにある。
屋上に設えたテラスの使い方にもCLASAKAのその姿勢があらわれている。

8Fの「Rooftop Terrace」はその名の通り、屋上テラス。
周りに視界を遮るような高い建物がないので、東京を一望することができる。
普段は館内の利用者が自由にくつろげるスペースとして開放しているらしいのだが、ウェディングパーティをはじめとした各種イベントの際にも利用されるとか。
CLASAKAが有坂塁さんと渡辺順也さんによる移動映画館ユニット「Kino Iglu」と共同企画運営で行っている「ルーフトップシネマ」もそのひとつ。

「ルーフトップシネマ」は屋上の壁にプロジェクターで映画を上映し、オープンエアーのもと、ゆったり鑑賞しましょうという企画。
今年で4年目のこの企画は、CLASKAの夏の恒例イベントとしてすっかり定着しているようだ。

開場すると、参加者たちは席やウッドデッキに座ってお酒を飲んだり、夜景を見ながらお喋りしたり、上映までの時間を思い思いに過ごすのだそう。
そうして自然の暗転を待つのだ。
日が暮れれば、上映開始。
屋外ということもあってか、その開放感から場の雰囲気は終始和やかなのだとか。
スタッフもお客さんに混じってお酒を飲みながら一緒に映画鑑賞するっていうことからもその場の雰囲気がうかがえる。
上映中も、トイレに行ったり、追加のドリンクを買いに行ったり。
映画を観ながら皆で笑ったり、声に出して突っ込みをいれる人がいたり。
パブリックでもなく、プライベートでもない。
開きながら閉じている、そんなコモンな空間だからこそ、ユルく柔らかい雰囲気が醸成させるのかもしれない。

屋外ならではのハプニングすら楽しめてしまうのも「ルーフトップシネマ」の魅力。
屋内と違い、屋外では空間をコントロールすることができない。
天気もそうだし、音もそう。
天気が微妙だと空を見上げて会話が生まれたり、救急車が近づいてくると皆で「来ましたね(笑)」と顔を見合わせたり。
映画館にはないイレギュラーな出来事を共有することで、それが喜びに変わり、記憶の深い部分の刻まれることになる。
「非日常」な体験は思い出になるのだ。

日本人は器用と言われる。
それは日常の中で創意工夫をすることによって豊かさを手にいれてきたから。
日本人は、レヴィ・ストロースの言葉を借りれば、「ブリコラージュ」が得意な民族性なのかもしれない。
屋上。白い布。PC。プロジェクター。映画。
持ち合わせのアイテムに少しのアイデアを織り込むこと。
「日本人の美意識のDNA」の解明のヒントはそんなところにもあるような気がするのは僕だけだろうか。

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